「焼酎唎酒師」の資格を田苑スタイル担当者が取ってみた
2022/02/21
神田駅界隈は実に賑やかなエリアだ。東西南北それぞれの駅出口周辺には、数多くの飲食店が散らばっていて、昼時は特に「西口商店街」が賑わい、どこの店も行列をなしている。夜は新橋駅同様、ここも飲んだくれサラリーマンのオアシス。コストパフォーマンスの優れた飲み屋が方々に林立し、小遣い4万円のお父さんにはありがたい憩いの地域となっている。
南口の横丁に佇む「釣吉」の店主、白澤敏治さんと女将の靖子さんご夫婦は、揃って無類の海釣りフリーク、これが店名の由来となっている。日曜日の早朝に漁場に出かけ、翌日の月曜日に店で新鮮な魚が提供される。その詳細は、随時店のホームページに掲載されるので要チェックしよう。
「昔は週一で海に行ってましたけど、いまは年取っちゃったもんだから、月二回ってとこですね」
いままで釣った中で一番の大物は37kgのクエだそうだ。これは高級魚で鍋にしたら最高のご馳走だ。店の壁の隅々には、魚拓や海釣りの写真が所狭しとデコレートされ、それを眺めているだけでもなんだかワクワクする。
主に行く漁場は下田の神子元島沖、相模湾、三宅島など。当然客も釣り好きが多く、収穫した魚を持参することもあるそうだ。
この日は食べられなかったけど、参考までに、ある日の鮮魚はご覧との通り。マゴチ、メバル、レンコダイ、ハナダイなどなど色鮮やかだな。
まずは「田苑ゴールド」のロックで喉を潤す。この焼酎はオーク樽で長期熟成させたもので、どこか洋酒をホウフツとさせる香りと深みが気に入っている。そしてつまみだ。カウンターに並ぶ大皿料理を吟味する。
アジの南蛮漬け、ガンモの煮付け、カレイの煮付けなど、どれにしようかな~。
「煮イカとダシ巻玉子と刺し盛りお願いします」
「はい。今日の刺し盛りは残念ながら、釣りたての魚はイサキだけなのよ」仕方ない、はやり月曜に訪ねるのがベターなようだ。
旨味の効いたシットリとしたダシ玉子は実に美味。塩加減、仄かな甘味のある煮イカも焼酎のアテにピッタリだ。
お店は19年前に創業したそうだ。昔は神田の北口で12年、現在の店に移転して9年になる。客層は無論釣り好きと、近隣のサラリーマンやOLで賑わっている。
「息子さんはお店継がれないんですか?」
「ええ、安定したサラリーマンですからね。彼は佐世保の平戸へよく出張するんですけど、ヒラマサ、マダイ、ヒラメなんかをよく送ってくれるんで、それが楽しみなんですよ」
「それはいいですね」
途中炭酸のセットをもらい、田苑ゴールドのソーダ割りに切り替える。これもどこかハイボールに似た味わいで、また旨い。
酔いが心地よく回ってくると、仕事を終えた客がゆるゆると流れてきて店内がにわかに活気づいてくる。
客の誰もが酒の肴に、釣りたての鮮魚を求めるが、あいにく昨晩ほとんどのネタが品切れしてしまった。ガックリと肩を落とすものの、どの客も和やかに酒を酌み交わす。そんな風景もまたこの店の味わいなんだな。今度はホームページを確認して店を訪ねてみよう。釣りたての魚、なにがいただけるか楽しみだ。
〈お店のご紹介〉
店名 / 釣吉
住所 / 東京都千代田区神田鍛冶町1-7-1
連絡先 / 電話03-3251-6063
営業時間 / 17時~24時
休日 / 土・日・祝
アクセス / JR山手線・中央線・京浜東北線「神田駅」南口・西口から徒歩2分
ホームページ / http://tsurikichi.net/
〈小野員裕のプロフィール〉
小野員裕(おの かずひろ / Kazuhiro Ono)
1959年北海道生まれ、東京都練馬区育ち。文筆家、大衆料理研究家、出張料理人。 17歳からカレーの食べ歩きを始め、横濱カレーミュージアムの初代名誉館長、「オールアバウト」のB級グルメガイドも務め、書籍、雑誌、テレビなど数多くのメディアで活躍する元祖カレー研究家。 これまでに食べ歩いたカレー専門店は1,000軒以上、飲食店は10,000軒を超え、いまも毎日1軒は食べ歩きを続ける日々。
ホームページはこちら
http://onochan.jp/
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