リニューアルOPEN! 焼酎資料館が見やすく、おもしろく!
2017/05/15
ウイスキーやウォッカと同じ蒸留酒の1つ「焼酎」。水割りやお湯割り、ソーダ割りなど、割材の工夫によっても多彩な味わい方を楽しむことができる焼酎は、お酒好きにはもちろん、お酒を普段はあまり飲まない人でも口にしやすいお酒です。そんなさまざまなシーンで愛飲される焼酎ですが、案外その名前の由来について知らない人は多いのではないでしょうか。
今回はそんな「焼酎」の、気になる名前の由来について、まだ明らかにはなっていませんが、いくつかの説をご紹介していきます。
1.焼酎の起源って?
2.焼酎の製法
3.焼酎の名前の由来を紹介
4.焼酎と「チューハイ」
5.まとめ
諸説ありますが、焼酎の起源は11世紀頃にまで遡ると言われています。当時のシャム国(現在のタイにあたる)を中心とした東南アジア・中東で作られたのが最初であった、という説が有力で、その後、日本にもたらされたとされています。
日本にはどのように流入してきたのか、その歴史はさまざまな説が存在し、はっきりしません。しかし中国を経由して琉球王朝に伝わったという説や、日本近海で中国と取引を行っていた倭寇が薩摩にもたらした、という説は比較的有力です。これら二つの説と、のちに紹介する「焼酎」という名前の由来について合わせて考えてみると、焼酎を飲む文化は中国から伝播してきた可能性が高いことがわかるでしょう。
では日本に初めて焼酎がもたらされ、作られるようになったのはいつからだったのでしょうか。日本国内で焼酎が作られていた証拠として、1546年に日本に上陸した貿易商人のジョルジェ・アルバレスが、薩摩を訪れ「日本人は米から作る蒸留酒を飲んでいた」と書いた記録が残っていることから、少なくとも16世紀頃には焼酎造りは始まっていたと考えられています。米から作る蒸留酒とは、現在の「米焼酎」にあたるでしょう。
17世紀後半を過ぎると、焼酎の製法について書かれた文書が多数残されるようになります。それらの文書によると、当時の日本では全国各地で「酒粕」を原料に焼酎を作っていたようです。もともと酒粕は肥料として重宝されていましたが、そのまま畑に撒くのではアルコール濃度が高すぎたため、酒粕を蒸留させて残った粕を肥料に、そしてアルコールは焼酎として農民たちに飲まれようになったと言われています。
焼酎の名前の由来を知るうえで、焼酎の作り方を知っておく必要があります。その作り方に、名前の由来へとつながるキーワードがあるからです。本題に移る前に、ここで焼酎の作り方について簡単に紹介していきます。
原料となる麹と米や麦などの主原料を準備したら、次は「発酵」の段階です。発酵の第一段階では麹に水と酵母を加えて混合し、5~7日ほどかけて酵母を増殖させていきます。そうして作られる「一次もろみ」に、今度は主原料と水を加え、さらに2週間かけて発酵させていきます。こうした工程を経て、芳醇な「二次もろみ」が生まれます。
発酵が済んだ次は、出来上がったもろみを「蒸留」させるのですが、実はこの蒸留の段階が、焼酎の名前の由来を知るうえで重要になります。蒸留とは、液体を沸点まで熱することで蒸気となった成分を、冷やして再び液体にする過程のこと。蒸留によって、沸点の違う水とアルコールを分離させ、焼酎の原酒を得るわけです。
ちなみに、この蒸留の過程があるかないかが、「醸造酒」と「蒸留酒」の大きな違いです。蒸留を通して作られる焼酎やウイスキー、ブランデーやウォッカなどは「蒸留酒」と呼ばれています。
蒸留して生まれた原酒にはガス成分が含まれており、そのままでは荒々しい味がします。そこで重要なのが焼酎造り最後の段階、「熟成」です。少なくとも半年以上寝かせることで、普段私たちが飲む焼酎は完成するのです。
それでは、本題の名前の由来についてです。焼酎は現在のタイのあたりで初めて作られ、各地に広がっていき、最終的に中国を経由して日本に伝わってきたことは、数ある説の一つとしてすでに紹介しました。実は、この中国から日本に伝わったという点がカギであり、「焼酎」が「ショウチュウ」と呼ばれだしたのには、中国との大きな関わりが理由としてあります。
そもそも焼酎の「焼」という字は、熱を加えること、つまりもろみを加熱、沸騰させて作るという蒸留酒の基本的な作業のことを指しています。そして、「酎」という字には濃い酒、強い酒という意味があるそうです。たった二文字で、焼酎というお酒の特徴を端的に表していると言えます。
では、「ショウチュウ」という読み方についてはどうなのか。実は、中国では蒸留酒のことを「焼酒」と書き「ショウチュウ」と読むそうで、おまけに濃い酒、強い酒という意味を持つ「酎」という文字も中華音で「チュウ」と発音するそうです。
そのため日本では、当初「焼酎」と「焼酒」の二語が混同して使われていましたが、18世紀頃から「焼酎」と表現するのが一般的になり、「ショウチュウ」という呼び方も定着していったようです。
そんな中国から伝わった焼酎は、日本においてさまざまな飲み方で味わわれるようになっていきます。「チューハイ」は、焼酎の「酎(チュー)」とハイボールの「ハイ」を合わせた言葉で、「焼酎の炭酸割り」のことを指します。ハイボールと聞くと、ウイスキーを炭酸で割ったものを想像しがちですが、本来はお酒を炭酸で割ったカクテルの総称のことを言います。
チューハイという言葉自体に厳密な定義があるわけではないので、実際のところ、その種類はとても多彩です。ウーロンハイや緑茶ハイなど、炭酸を入れているわけではないものの、広義ではチューハイとして区分される飲み方もあるのです。焼酎をベースに、レモンやグレープフルーツなどの果汁を加え、炭酸で割った飲み物のことを指す場合もあります。
ちなみに焼酎にレモン、炭酸を加えて作るお酒を「レモンサワー」と呼ぶことは現在では一般的なことですが、本来「サワー」は、スピリッツを酸味の強い柑橘系やベリーなどのジュースで割ったカクテルのことを指します。
なので本来の意味としては、チューハイは焼酎がベースのカクテル、サワーはスピリッツを酸っぱい果実のジュースで割ったカクテル、として分けられるべきですが、現在はその住み分けが曖昧になっているようです。
今回は焼酎というお酒の歴史や名前の由来について紹介してきました。
現在のタイを発祥とし、中国を経由して日本に入ってきた味わい深い蒸留酒の焼酎。焼酎は、そのアルコール度数の強さから下戸や普段あまりお酒を飲まない人からは敬遠されてしまうことがありますが、そんなあなたにはチューハイをおすすめします。「酎(チュー)」という字には強い酒、濃い酒という意味があることはすでに紹介しましたが、実際のところ、酸っぱい果汁や炭酸で割るチューハイはほんのり甘くて飲みやすく、気づけば「定番」のお酒になっていること間違いなしです。