No焼酎,NoLIFE!お酒と言えば「焼酎」の家系で育った焼酎サラブレッドに聞いてみた
2016/03/23
大麦はイネ科の植物で、世界最古の穀物のひとつ。ビールやウイスキー、麦焼酎の原料になるのは二条大麦、麦茶や食用に使われるのは六条大麦だ。二条、六条というのは麦穂の形態(「条性」という)によるもので、穂を上から見たときに6方向に粒が広がっているのが六条大麦、2方向の粒だけが大きく成長するのが二条大麦。二条大麦は六条大麦に比べ、粒が豊満で大きいのである。
この記事では、二条大麦を主原料とした本格焼酎・麦焼酎のことを詳しくまとめたい。まずは、2020年に発表された国税庁の調査データ。九州各県の本格焼酎の出荷量を主原料別に見てみると、芋焼酎が53.7%、麦焼酎が38.2%であり、この2種類だけで九州から出荷される本格焼酎の9割を占めている。
https://www.nta.go.jp/taxes/sake/shiori-gaikyo/shochu/index.htm
(国税庁HP 単式蒸留焼酎製造業の概況(平成30年度調査分))
これを県別の構成にした場合、宮崎や鹿児島では芋焼酎が最も多いのに対し、大分・長崎・福岡・佐賀では麦焼酎が最多だった。
なかでも大分で造られる本格焼酎は、その99.6%が麦焼酎で、このうち89.6%が九州外へ移出されている。関東や京阪神をはじめ全国へ流通しているというわけだ。
もともと大分には麦麹を用いて味噌や醤油を造る文化があったので、焼酎の製造にも早くから麦麹が使われていた。そして1970年代になって登場したのが「減圧蒸留」という技術。「減圧蒸留」の特徴としては味わいのクセが無くスッキリとしているものが多い。
本格焼酎の蒸留は、それまで常圧で行われるのが一般的だったが、蒸留器の内部を減圧して行うとアルコールが低温は蒸発する。必要以上に加熱をしないので、原料に由来する脂分や酸などの成分が蒸留で上がってこない。そのためクセのないスッキリした焼酎が造れるのだ。1980年代にはこうしたスッキリ系の麦焼酎が全国区になっていって、第二次焼酎ブームを牽引した。
2番目に麦焼酎の比率が高い長崎には、「壱岐」という離島があり、ここは麦焼酎の発祥の地とされている。九州と対馬の間、玄界灘に浮かび、南北17km・東西14kmとさほど大きくはないが、古代より朝鮮半島と九州を結ぶ海上交通の中継地として重要な役目を担っていた。蒸留技術が日本へ伝播したルートとして、朝鮮半島から壱岐へ渡ったという説もある。
壱岐の麦焼酎は、16世紀からの長い歴史のなかで独自の製法が確立されており、米麹1/3に対して大麦2/3で造られるのが特徴。1995年には地理的表示の産地指定を受け「壱岐焼酎」と表記されるようになった。米麹で造られた焼酎は米由来の甘味や旨味が強い分、味わいに厚みが感じられる。
ここまで大分と壱岐の麦焼酎を例に、その製法と味わいの傾向をみてきたが、麦焼酎の製法はこれにとどまらない。大麦を主原料にすることは同じでも、その他の選択肢がたくさんあって、さまざまな組み合わせで多様な麦焼酎が造れる。
製造工程を追って見てみよう。
麹原料には米や麦が使われる。
麹菌には、軽快でマイルドな味わいになる白麹菌や、どっしりとした旨味の黒麹菌がある。
・一次仕込み
製麹工程で造られた麹に水と酵母を加えて発酵させ、アルコールを作るための酵母を増やしていく。これは「一次もろみ」と呼ばれる。
・二次仕込み
二次仕込みは、一次もろみに蒸した主原料を加えて発酵させるのが一般的。特殊な仕込み方法としては「全麹仕込み」というものがあり、主原料に麹を使用して発酵させる仕込み方法である。
味わいがしっかり系になる常圧蒸留とスッキリ系の味わいになる減圧蒸留がある。また、製品としてはその両方の原酒をブレンドしたものもある。
タンク貯蔵やウイスキーのような樽貯蔵、昔ながらの甕に貯蔵をすることにより熟成され、貯蔵する容器によって様々な味わいに変化する。貯蔵年数や、樽貯蔵の場合は樽材によっても、味わいに変化が生まれる。
田苑ではすべての麦焼酎で、クラシック音楽の信号を振動に変えて発酵・熟成を促す「音楽仕込み」しており、よりまろやかな味わいになるよう仕上げている。
田苑の麦焼酎には、白麹を使用した『田苑 白ラベル』の他に減圧蒸留の原酒をブレンドした長期貯蔵の『田苑 シルバー』がある。『田苑 金ラベル』や『田苑 ゴールド』など米麹と麦麹の原酒をブレンドした樽貯蔵焼酎や、黒麹を使用した原酒を甕で貯蔵した『田苑 黒ラベル』のような、ガツンと飲み応えのある麦焼酎がある。その他にも全麹仕込みの原酒を使用した『金の慶次』なども製造している。
このように、一口に「麦焼酎」と言っても様々な特徴のものがある。ぜひ好みの味わいの1本を探してみてはいかがだろう。