モーツァルトの最後の交響曲である第41番「ジュピター」より第1楽章

田苑酒造では一次仕込みの際に、音楽の信号を振動に変換し焼酎に伝える、トランスデューサ―と呼ばれる特殊なスピーカーで、もろみの発酵を促進させる「音楽仕込み」でお酒造りを行っています。

そんな蔵で流している楽曲の中から、今回はモーツァルトの最後の交響曲である第41番「ジュピター」より第1楽章をご紹介します。

 

荘厳で輝かしい“ジュピター”

焼酎音楽

1788年8月10日、モーツァルトが32歳の時にウィーンで完成させた交響曲第41番「ジュピター」は、交響曲第39番(同年6月26日完成)と交響曲第40番(同年7月25日完成)とともに “モーツァルトの3大交響曲” と呼ばれています。
他の2曲と同じように作曲の意図や初演の日時など明らかになっていない点も多い楽曲ですが、モーツァルトの生前にはすでに演奏されていたと考えられています。

交響曲第41番「ジュピター」を作曲した頃のモーツァルトは、オペラ「フィガロの結婚」、「ドン・ジョヴァンニ」の成功を収め、作曲家として多忙のピークを迎えていました。しかし、経済的には未だ余裕のない生活を送っており、1787年5月には父親レオポルトが死去、同年末に生まれた長女テレジアも翌年の1788年6月に亡くなってしまい、身内の不幸も続いていました。

モーツァルトはこの困窮からの抜け出すために、予約演奏会(作曲家が新曲が完成する前から披露のための演奏会を予告し、新曲を聴きたい客が予約金を支払う方法で運営される演奏会)を計画しました。これによって、彼はわずか2ヶ月という短期間で、性格の異なる3つの交響曲を一気に書き上げたのです。

“ジュピター” というニックネームはモーツァルト自身がつけたものではなく、彼と同時代に主にロンドン活躍したドイツ生まれのヴァイオリニストでプロデューサーでもあったヨハン・ペーター・ザロモンが名づけた事が、イギリスの音楽家のヴィンセント・ノヴェロが書いた「モーツァルト巡礼」で紹介されています。

このニックネームは、交響曲第41番の壮大で神秘的な曲調から着想を得て、ローマ神話の最高神である“ユーピテル”に因んで付けられたそうで、19世紀後半には広く知れ渡り、親しまれていたようです。

また、彼を崇敬していたドイツの作曲家のリヒャルト・シュトラウスは、友人に宛てた手紙の中で「ジュピター」について、“私が聴いた音楽の中で最も偉大なものである。終曲のフーガを聞いたとき、私は天国にいるかの思いがした”と書き記し、賞賛していたといいます。そのうえ、リヒャルト・シュトラウスは1926年に自身の指揮で「ジュピター」の録音も行いました。

 

 

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焼酎音楽

今回ご紹介するモーツァルトの交響曲第41番の第1楽章には序奏がなく、ハ長調を強く感じさせる和音と、柔らかく優しい旋律が組み合わさった第1テーマで始まります。その後に現れる第2テーマではト長調になり、弦楽器らしい優美なフレーズが特徴的なメロディーが歌われます。
中間の展開部では、一般の民衆に向けた滑稽さを主とするオペラの形態 「オペラ・ブッファ」的な軽やかさのある旋律が次々と模倣され、フーガのように描かれています。

輝かしくも表情豊かでユーモアのある“モーツァルトらしさ”が溢れているこの楽曲から、田苑酒造のタンク内の“もろみ”はどんな影響を受けているのでしょうか。

麗らかな温かみを感じさせたり、童心に帰るような遊び心を湧かせたり、朗らかな中のふとした陰りを思わせたり。モーツァルトのキャラクターそのものが乗り移ったかのような音楽は、人や物を芯から充実させるパワーを持っている気がします。

モーツァルトにとって交響曲の集大成とも言える今作品は、田苑焼酎の味や香りだけでなく、まとう雰囲気の魅力さえも最大限に発揮させてくれることでしょう。

 

 

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