【連載】小野員裕の田苑酒場巡礼 神田「釣吉」
2019/07/29
新感覚の芋焼酎「エンヴェレシーダ」は、飲食店のプロにも注目されています。その1つがフレンチレストラン「NARITA YUTAKA」。お店ではコース料理のペアリングの1つとしてエンヴェレシーダが提供されています。ソムリエの苅田知昭さんにエンヴェレシーダの魅力と新しい楽しみ方を聞きました。
東京・中目黒のフレンチレストラン「NARITA YUTAKA」では、2019年秋から「エンヴェレシーダ」をコース料理のペアリングの1つに提案されています。取り扱いを始めたきっかけは何だったのでしょうか?
「夏の終わり頃、鹿児島出身のお客様がご結婚の報告がてら、来店してくださいました。そのとき、お土産にいただいたのがエンヴェレシーダでした。正直に言うと、芋焼酎はクセが強いというイメージがありましたが、テイスティングしてみると、樽貯蔵から来る香りの甘やかさが際立っていました。これまでの芋焼酎だと、芋くささやアルコールの高さに由来する香りがあったと思うのですが、それらも一切感じなかったのが印象的でした」(苅田知昭さん、以下同)
さらに、お店で取り扱おうと思ったのは、ソムリエ仲間との勉強会で話題になっていたテーマというのも後押しになったそう。
「お店が終わった後、ソムリエ同士で勉強会をやっていて、ペアリングに使うお酒について話題になっていました。いま、ペアリングに使うのは何もワインだけではなく、和酒も提案していこうという流れにあります。日本酒やウイスキーも選択肢の1つですが、日本ならではの蒸留酒という点では焼酎にも可能性を感じていました。そこで、エンヴェレシーダを知ったタイミングもよく、お店で使うイメージが広がりました」
実際にエンヴェレシーダを飲んでみて、どんな印象を持ちましたか?
「さつま芋本来の甘さや樽から来る柑橘類のフルーティさとオークの香りの親和性が素晴らしいと思いました。ワインも樽を使って風味を増しているものがありますが、果実のバランスとマッチしておらず、アンバランスなものが意外とあります。果実味に対して樽の風味が過剰なものがあったり、あるいは時間の経過とともにバランスが崩れてしまうんです。その点、エンヴェレシーダは、長期熟成なのか音楽仕込みの効果なのか、芋と樽が良くなじんでいて、時間が経過してもそのバランスは良いままでした」
苅田さんは味わいだけでなく、ソムリエ目線でのパフォーマンスの良さもエンヴェレシーダにはあると言います。
「ワインの仕入れをするときには試飲会を利用するんですが、最終的に決め手となるのは値段とのバランス。試飲してみて、いくらくらいかを予測してそれよりもコストパフォーマンスが良ければ採用することがあります。エンヴェレシーダの場合は、5000〜6000円くらいする予想でしたが、実際には3分の1以下。ソムリエとしてうれしい驚きでした。それに、ラベルも音楽を表現しているような楽しげな雰囲気。店に並べて絵になるのもいいなと思いました」
お店ではエンヴェレシーダがコース料理のデザートに合わせてペアリングされています。しかし、苅田さんは飲み方によってさまざまな料理に合わせることができると言います。そのなかでも、おすすめの飲み方は、「水割り」と「アールグレイ割り」。まずは水割りの作り方を教えてもらいました。
「水割りはワインと同じくらいのアルコール度数(12.5℃程度)になるように、エンヴェレシーダと水を1:1にしています。さらに、エンヴェレシーダがなじむように前割りにして、ワイングラスで提供しています。ワイングラスだと風味を閉じ込めることができるので、より味に集中して楽しんでいただけると思います」
さらには、水の種類を変えてみるのもおすすめだそう。
「割るときも、軟水、中硬水、硬水によって味わいも変化します。軟水で割ると、柔らかくなじんで風味が横に広がるイメージ。だし汁の利いた料理などには軟水割りが合うと思います。硬水で割ると、ミネラル感が引き立って味が縦に伸びるイメージで余韻が長くなります。揚げ物などをさっぱりさせたいときにいいですね。中硬水はその中間でバランスがいいイメージになります。食中酒としてエンヴェレシーダを飲むときは料理に合わせて水を選んでみてください」
現在、お店でデザートとして提供しているのは、さつま芋チップスとパイ生地の上に炒り番茶のアイスクリームをのせたもの。こちらに合わせて好評なのが「アールグレイ割り」。どのようなものなのでしょうか?
「エンヴェレシーダをアールグレイの紅茶で割ったものです。水割りと同じように1:1で割って、ワイングラスで楽しんでみてください。お店で提供するときは中温で提供していますが、紅茶を温かいまま割って、ホットドリンクにすることも可能です。デザートなど締めで出すときには、口の中もさっぱりするので、おすすめです」
紅茶で割るというのは、新しいアイデアです。どんな味わいがするのでしょうか?
「アールグレイは、紅茶をベルガモットで柑橘類の香りをつけたもの。エンヴェレシーダは柑橘類の香りがあるので、それがさらに増すイメージです。通常、蒸留酒をお茶で割ると、お茶の個性が優ってしまうことが多いんですが、焼酎はもろみから原酒を造っているせいか、お茶にも負けずうまく調和しました。焼酎にはないタンニンの渋みも加わって、より複雑な味わいになります」
このほか、同じように緑茶割りや玄米茶割り、ジャスミン茶割りでも合うそう。いろいろなお茶で割ってみるのも楽しそうですね。最後に苅田さんにエンヴェレシーダの楽しみ方の可能性を聞いてみました。
「今回、水割りやアールグレイ割りを提案したように、エンヴェレシーダは割り方を問わないお酒だと感じています。また、割るときに水や紅茶の分量を増やせば、それだけアルコール度数を抑えることもできます。ワインや日本酒と違って、口を開けてからの保存を気にしなくていいので、そのままリビングやキッチンに置けるのもいいですね。自宅に買っておけば、いろいろと重宝すると思います」
(まとめ)
エンヴェレシーダは、普段ワインを扱うソムリエの方も魅了する味わいや楽しみ方があることがわかりました。水割りも紅茶割りや緑茶割りも、自宅でも簡単にできる方法。1人で楽しむのはもちろん、ホームパーティーで訪ねてきた友達に振る舞えば、驚きを与えられるはず。新しい楽しみ方を家族や友人と満喫してみませんか。
<取材協力店舗>
cuisine francaise NARITA YUTAKA
東京都目黒区中目黒1-10-23 リバーサイドテラス103
03-5734-1214
ランチ:木〜日 11:30〜15:00(13:00 LO)
ディナー:火〜日 18:00〜24:00(21:00 LO)
定休日:月、第1第3火
※こちらの店舗情報は取材当時(2020年1月)のものです。
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