田苑の女性企画開発チームに新作梅酒についてインタビューしてきました! 後編
2017/01/16
5月半ば、野中さんの麦畑に収穫の時期が訪れた。麦は穂首を大きく湾曲させて、コウベを垂れている。初夏の陽光を浴びて黄金色に輝く畑が美しい。空高く、ヒバリがさえずり、畦道を歩くと、足元でカエルが飛び跳ねた。
麦畑は、樋脇町から北へ約35km、冬には1万羽を超えるツルが渡来する出水市の阿久根地区にある。麦作り50年の野中保さんが中心となって耕作する二条大麦の圃場だ。何面かに分かれているが、合計すると11町、約11ha。サッカーグラウンド15面分以上になるという。
野中さんは、かつて鹿児島県で唯一の種場として、県内で栽培されるすべての二条大麦のための種を提供し続けてこられた。田苑酒造では、そんな野中さんの麦を原料にして、純鹿児島産の麦焼酎を造る計画が進められているのだという。
鹿児島での大麦栽培は、11月に畑に直に種を播き、発芽して越冬。4月に穂が出て開花し、40日後あたりには収穫となる。夜露に濡れていた麦穂がしっかり乾いたのを見計らって、畑にコンバインが入り、バリバリと刈り取りだした。
麦栽培には、どんなことが大切ですか?
「いちばん大事なのは排水です。水はけがよくなくてはなりません。土壌に水分が少ないと、麦は水分を求めて根を深く張り、強く立派に育ちます。しかし、畑にトラクターなどの機械を入れると、どうしても土が硬く固まってしまう。これを解消しないと、雨のあとになかなか水が引かないというような状況に陥ってしまうのです」。
どのようにして解消するのですか?
「まず、種を播く前に「サブソイラ」という機具で硬い耕盤を切り裂いて、水が縦に浸透しやすいようにします。そして「プラウ」という機具で深く撹拌するように耕します。圃場の周囲の額縁には、排水のための溝を設け、これで横方向への排水も万全です」。
雨の多い鹿児島でも、品質や収量が落ちないようにする工夫。自身の経験から導き出した、いわば野中流の麦栽培の極意があったのだ。
野中さんに勧められ、収穫したばかりの生の麦をかじってみた。甘い。麦というと芳ばしい香りを思ってしまうが、こんなに甘いものなのだと知る。
「甘いでしょ。でんぷんが多いから。排水がよくて、根が頑丈でたくさん出てるから、いい麦ができるんです」と野中さん。
「ひとつの穂に実が11段できれば合格」ということだったが、畑で拾った落ち穂を数えてみると、2列に13段も並んでいた。「これからも最高の麦を作りますよ」と笑顔を見せる野中さんと、その麦を原料に、またひとつ新しい価値を創り出す田苑酒造。わくわくするようなコラボレーションが実現しそうだ。