寒〜いからこそウマイ!冬の味覚と本格焼酎
2022/12/26
ビニールハウスに入ると、ほんわかとした空気に包まれた。さすがの鹿児島も12月の平均気温は10℃あまりで、外では厚手のコートやダウンが必須なのだけど、ハウスの中は春らんまんの暖かさで、花のような甘くて清々しい香りが漂っていた。
鹿児島県薩摩川内(せんだい)市入来(いりき)町。田苑酒造の本社がある同市樋脇町から車で15分ほどのこの地域で生産される金柑は、「川薩(せんさつ)地区のハウスきんかん」として「かごしまブランド」に指定されるほど品質が高いという。
この薩摩川内の金柑を使って、田苑から『金柑こみち』というお酒が出るというので、高品質な金柑とは、どういうものなのか。それを直接確かめてみようと、金柑づくり25年の高嶺弥兵衛(たかみね やへい)さんの農園へやって来たのである。
「みなさんよく金柑は酸っぱくて、皮だけ食べるとか、甘露煮にするとか、そういうイメージを持たれるのですが、ぜんぜん違います。ハウス金柑は、糖度が乗っていて、甘く、そのまま丸ごと食べられます」という高嶺さんに案内してもらってビニールハウスの中を進んだ。
濃い緑の葉の間に、コロコロとした丸い実がたくさんなっていた。が、アタマの片隅にあった金柑とはずいぶん様子が違う。記憶の中の金柑は、民家の庭先にある木に黄色の小さい実が鈴なりで、一種の庭木のようなものなのだけど、ハウスの中の金柑は、記憶の中の金柑の倍くらい大きくて、実の大きさも均一で、しかも黄色ではなくオレンジ色なのだった。
「今まだ収穫がはじまったばかりです。実の色がオレンジ色になって、ヘタに近い部分が紅色がかったものを収穫します。最盛期は1月半ばからですので、これから1カ月、もっと大きくなって熟していきます」と高嶺さん。なーるほど。高品質の金柑というのは、もう大きさや色からして違うのか! 高嶺さんが生産する金柑はハウス3棟、面積にして約1反(10a)、約3トンの収穫量がある。
せっかく調べてきたんだから書いておくと、『金柑は、ミカン科キンカン属の木になる果実である。柑橘類にはみかんやオレンジ、はっさく、ポンカン、レモン、グレープフルーツ…と多くの種類があるが、金柑はじつは柑橘属ではなく、独自の金柑属という分類になる』。へぇ〜〜でしょ。
どうしたら、こんなに大きな金柑になるのか、高嶺さんに聞いた。
「金柑は6月10日頃から花が咲いて、一番花が落ちても、二番三番と、年に数回花が咲きます。放っておくと、ものすごくたくさんの実がなりますが、そのぶん実は小さいんです。それを大きくするために「摘果」します。ひと枝に2、3個程度に」。
摘果とは、実が成長する前に摘んで数を減らすこと。キズのあるものや小さすぎるものを取り除いて、いい実だけを残して大きく育てるのだ。
出荷される実のサイズはMから4Lまで5階級に分かれている。鹿児島県の「ハウスきんかん出荷基準表」によると、直径2.6〜2.8cmがMサイズ、3.2〜3.6cmが2Lだ。高嶺さんが作る金柑は、大きくて形がきれいなことで生産者の間でも有名で、4L(3.8cm以上)にもなる。
ハウスの中をひと回りしたところで、「食べてみますか」と十分に色が乗った金柑を差し出された。待ってましたとばかりに、そのまま皮ごとかじりつく。甘い。本当に甘い。甘いとは聞いていたが、これほど甘いとは思っていなかった。
糖度14度以上でなければ出荷できないという規制があるらしいが、高嶺さんちの金柑が完熟すると、糖度16度以上にもなるという。ちなみに温州みかんは約12〜13度、いちごは約15度。それ以上ってことだ。
皮は薄くてやわらかく、果汁たっぷりで、口の中いっぱいに甘みと特徴のある香りが広がった。ほんのちょっと苦みもあるが、それも金柑ならではの風味で爽やかだ。薩摩川内で生産される金柑は、そのほとんどが生食用で出荷される。昼夜の寒暖差が大きいなど、この土地の気候や風土も金柑を甘くする要因だという。
大きくて甘い金柑を作るには、木自体を元気にすることが大切だという。果樹は接ぎ木によって改良したり、繁殖させるのが一般的で、高嶺さんの金柑の木に新しい穂(新芽)が出ると、それを業者さんが買い付けに来るのだそう。大きな実のなる木の穂を、別の台木に接ぎ木することで、大きな実がなるDNAを受け継いだ苗を作ることができるからだ。
「金柑の木にもいろいろあって、品種は同じでも大きな実がなる木があります。それを毎年毎年ていねいに剪定して丈夫に育て、温度管理して摘果して水管理して、丹精込めてやると4Lの実をつけるまでになるんです」と高嶺さん。大きくて甘くておいしい金柑は、まさに高嶺さんの情熱の結実なのだ。
高嶺さんの金柑を惜しみなく使用したスピリッツ『金柑こみち』がついに完成!
ご興味のある方はぜひ下記サイトをご覧ください。
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Kura Master 2021 プラチナ&審査員賞、TWSC 2020最高金賞、LAISC金賞受賞。琥珀色の輝きの中に立ち上がる柑橘系の華やかな香り。全量3年貯蔵酒ならではのまろやかさ。原料の特性とオーク樽に由来する甘さが絶妙にマッチして、フルーティな味わいを醸し出す。そして、じわりと広がって深く余韻を残すのは、他に類をみない、はじめての味。
ENVELHECIDA(エンヴェレシーダ)とはポルトガル語で“貯蔵”を意味します。
【日本百貨店協会会長賞受賞】クラシックの名曲をモチーフに、5つの香りと味、ボトルやパッケージまでトータルにデザインされた、音楽仕込の田苑ならではの全く新しい焼酎セット。りんご、なし、メロン、バナナ、マスカット…フルーティな香りを生みだしたのは、ワイン酵母と清酒酵母。焼酎造りでは考えられない方法を試行錯誤した末に、この、甘く、華やかに香り立つ新しいお酒ができました。音楽好きの方や、女性におすすめの飲み比べセットです。
詳しく見るオーク樽の中でゆっくりと時間をかけて熟成した原酒は、かつてないまろやかさと深い味わいを醸しました。全量3年貯蔵、樽貯蔵、音楽仕込みといった田苑酒造の技と粋を惜しみなく注ぎ込んだのが、この田苑 ゴールド。バニラのような香り、重厚で力強さがありながらも、まろやかさがあり、飲んだ後もしばらく余韻が続く、深い味わい。樽貯蔵ならではの黄金色の輝きも、エイジングスピリッツの頂を目指した証しです。
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