焼酎が人と人とを繋ぐ “出張焼酎BAR”東京へ

お酒の縁が、人と人とを繋いていく。そんな理想的な関係が、東京と熊本に生まれている。2016年4月、熊本県を襲った震度7の地震。遠く離れた東京で、何か自分たちにできることはないかと考え、それを実行に移した人がいる。東京三鷹にもつ鍋と焼酎のお店「新井家」を構える田島英彦さんだ。

田島さんは「新井家」での熊本産の焼酎の売上金の一部を義援金とすることで、復興支援を行った。そしてこの義援金は、熊本で「Glocal BAR 芋 vibes」を経営する山下紀幸さんのもとに届けられた。それまでフェイスブック上での繋がりしかなかったふたり、そのふたりを結びつけたのは、お互いに共通する焼酎に対する熱い思いだ。

その田島さんの支援へ感謝の気持ちを込めて、御礼として山下さんが行うことになったのが、このたび「新井家」にて開催されたイベント“出張焼酎BAR”だ。今回はイベントの主催者である田島さんと山下さん、そしてもう一人、バーテンダーとして参加したChristopher Pellegriniさんの3人からお話を伺った。

 

開催概要
日時 2016年10月9日(日)19:00‐23:00
会場 新井家 三鷹北口店
http://araiya-mitaka.main.jp/north/index.php/

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最初の1は“金ハイ”でスタート

会場である「新井家」に到着したのは19時10分前、すでに会場はお客様でいっぱいに。 今回のイベントには田島さん、山下さんはもちろんのこと、英語の焼酎本を出版し、酒造組合ともお仕事をされているアメリカ人焼酎プロChrisさんもバーテンダーとして参加。会場には外国人のお客様も多く見受けられ、店内は英語が飛び交うグローバルな雰囲気。

まず乾杯用に振る舞われたのは「田苑 金ラベル」の炭酸水割り、通称“金ハイ”。山下さんの乾杯の音頭とともに、全員がシャンパンゴールドに色づいたグラスを傾け、イベントがスタートした。

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イベントのきっかけは、互いへの“お礼”と“恩返し”

「もともと『新井家』は取り扱う焼酎の蔵元を直接訪ね、こだわりやストーリーをお客様に伝えていこう、というスタイルで経営してきました。いろいろな蔵を訪ねたいという思いが強くなる一方、だんだんと日々の業務に追われ、それが難しくなってきていたんです。そんな中、蔵元さんが発信していないような情報まで載っている山下さんのフェイスブックを見て、スタッフ全員で勉強させてもらっていました」(田島英彦さん)

そして熊本を襲った未曽有の大震災、山下さんのお店では100本近くの焼酎がその被害にあったという。震災後、復興のめどが立たず、閉店や倒産に追い込まれるお店や企業が立て続いていた。これまで同じ30代の経営者として、山下さんの思い描くヴィジョンや行動力に共感していたという田島さんは、この震災によるダメージで山下さんのお店が止まってほしくないという思いから、これまで焼酎の勉強をさせてもらったお礼として義援金を贈ることを申し出たのだ。

「それまでフェイスブック上での繋がりしかなかった『新井家』の田島さんから、義援金を贈りたいとメッセージをもらった時、直接お会いしたこともなく、お顔も知らない方からお金を受け取るわけにはいかないと思い、はじめはお断りしていたんです」(山下紀幸さん)

その後の交流から、お互いが焼酎に対する熱い思いを同じくする者だと理解し合ったふたり。これまで熊本市内の飲食店で月に一度、“出張焼酎BAR”を開催してきた山下さんは、愛する熊本の焼酎の売り上げで作られた義援金とともに、「いつか東京の自分の店で“出張焼酎BAR”を開いてほしい」という言葉を田島さんから受け取っていた。

今回実現したこのイベントは、ふたりの互いへの“お礼”と“恩返し”の気持ちが結実したものなのだ。

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(写真)田島英彦さん

 

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(写真)山下紀幸さん

 

焼酎が結ぶ、もうひとつのグローバルな縁

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今回のイベントに参加したバーテンダー、アメリカ人のChristopher Pellegriniさんも焼酎をきっかけに山下さんと結びついたひとりだ。Chrisさんと同じように、焼酎の魅力に魅せられた外国人の友人の紹介で訪れたのが、山下さんの経営するお店だったそう。

「2002年に来日し、焼酎と出会ったのはその1年後。バーテンダーに勧められるままに、はじめて飲んだのは麦焼酎でした。続けて芋焼酎、米焼酎と飲み進めるうちに、同じ焼酎なのにこんなにも味わいが異なるのかと驚きましたね。その後、焼酎の魅力に目覚め、もっと知りたいと直接九州の酒造の門を叩きました。その当時、英語バージョンのウィキペディアには焼酎のページがなく、自力で調べるしかなかったんです」(Christopher Pellegriniさん)

それからずっと焼酎の勉強をしているというChris氏、2014年には「THE SHOCHU HANDBOOK」を出版し、海外に本格焼酎を紹介する活動を続けている。熊本を訪れた際にはバーテンダーとして、山下さんのお店に立ってイベントを行うこともあるそうだ。

「これから焼酎はもっと世界に受け入れられていくはずです。日本酒の次のムーブメントになる日も近いと感じますね」(Christopher Pellegriniさん)

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(写真)Christopher Pellegriniさん

 

三者三様、焼酎の魅力とは

鹿児島生まれながら、父親が自衛官という転勤の多い職業ゆえ、ほとんど鹿児島に住んだことがなかった山下さん。それまで鹿児島に対して感じていなかった“地元愛”という感覚が芽生えたのも、焼酎がきっかけだったという。

「大学進学で鹿児島に戻ってきたとき、地元の人たちが焼酎を飲みながら幸せそうに笑っている姿を目の当たりにしたんです。それまで鹿児島に住んだことのない、いわば部外者のような自分でも焼酎を飲めば、自然と地元の輪の中に入っていける。焼酎の魅力、“人と人とを繋ぐ力”を実感しましたね」(山下紀幸さん)

震災後失ってしまった観光客を取り戻すためにも、九州の焼酎の魅力をもっと海外へアピールしていく必要性を感じているという山下さん。フェイスブックでも英語を交えて情報発信していることもあり、お店には海外からのお客様も多く訪れる。そんな外国人のお客様にも、“焼酎を飲むとローカルな友達ができる”とその魅力を伝えているそうだ。

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「焼酎の力で畏まらずフランクになれ、それがローカルな友達作りにつながっていくんです。日本の焼酎を美味しく味わってもらうだけでなく、焼酎を介してできた友達にまた会いたい、と九州に戻ってきてもらえるようになればと願っています」(山下紀幸さん)

一方、田島さんにとって焼酎の魅力とは“落ち着くお酒”であることだという。

「焼酎を介して話すことによって、時間を気にせず、落ち着いてゆっくり話せるように思いますね。自分の思いをうまく伝えられ、人と繋がりやすくしてくれるような気がします」(田島英彦さん)

また、Chrisさんにとっての焼酎の魅力とは“味わいとアロマの幅の広さ”にあるという。

「麦、芋、米以外にもシソ、昆布、ニンジン、トマト、サボテン、アロエと様々な原材料を使った焼酎があり、必ず好みの味わいが見つかると思います。どんな料理であっても相性のいい焼酎が見つかるペアリングのしやすさも焼酎ならでは。また、近年の健康志向にぴったりなカロリーの低さもポイントのひとつだと感じます」(Christopher Pellegriniさん)

テーブルに並ぶのは、焼酎とのマリアージュを意識した「新井家」自慢の料理たち。ますます熱気の高まる店内は、山下さんとChrisさんによる焼酎のレクチャーに耳を傾ける焼酎ファンで満員御礼状態に。

周りをふと見渡せば、あちらこちらでそれまで面識のなかった隣の人との交流が生まれている様子。今後も東京という大都市で焼酎の魅力をアピールしたいと語る山下さん。焼酎を介して、また新たな縁が繋がれていくこの“出張焼酎Bar”、次回の開催が楽しみだ。

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